【2024年】トランプ氏の指名受諾演説で学ぶ英単語と文法のポイント

2024年11月5日は、アメリカ大統領選挙の日。今回のブログでは、ドナルド・トランプ氏が2024年7月の共和党全国大会で行った指名受諾演説の原稿を使って、実際にどのような英文法が使われているのかを解説していきます。また、使われている語彙レベルについても詳しく説明します。

ブログでは、英語ガチ勢だけではなく、初心者や中級者の方にも安心して読んでいただけるように、できるだけ丁寧に解説しています。

英会話やスピーチで使える文法をたっぷり解説しているので、「ちょっと難しいかな?」と思っても、あきらめずに読み進めてみてください。少しずつ理解を深めていけば、確実にステップアップできるはず。

以下の記事では2024年8月にカマラ・ハリス副大統領(民主党大統領候補)が民主党全国大会で行った指名受諾演説で使われている英単語の難易度や文法について詳しく解説しています。今回の記事と比較すると、より英語力がアップしますので、あわせてご覧ください。

目次

【教材】指名受諾演説の原稿と動画について

今回教材として使用するトランプ氏のスピーチ原稿と動画のリンクをご紹介します。

指名受諾演説の全文

スピーチ全文はこちら↓↓

【英語のみ】指名受諾演説の動画

スピーチ動画はこちら↓↓ 銃弾で撃たれた右耳のガーゼが痛々しいですね。

【同時通訳あり】指名受諾演説の動画

同時通訳付きの動画です。全部聞くと長いので、3:13:44あたりから再生してください。同時通訳はトランプ氏の演説にのみ提供されているようです。

2024年共和党全国大会スピーチの英語レベル

文法と語彙の解説を始める前に、今回教材として使うスピーチの英語レベルについてご説明します。

英語レベルを測るツール:リーダビリティ・テスト

   

検証で使用したのは、リーダビリティ・テスト(Readability Test)です。これは、文章がどれくらい読みやすく、理解しやすいかをチェックするツールです。例えば、「この文章は小学生でもわかるかな?」とか「ちょっと難しすぎるかな?」といったことを数値で教えてくれるんです。

リーダビリティ・テストは、例えば英語でWebサイトの記事やスピーチ原稿を書くときに、とても便利なオンラインツールです。これを使えば、ターゲット読者が読みやすい文章かどうかを簡単にチェックできるので、自分が書いた英文が難しすぎて伝わらない、なんてことを避けられます。

リーダビリティ・テストでは、いくつかの指標を基準に総合的な読みやすさが判定されます。それぞれの指標に興味がある方は、こちらをご参照ください。

このブログでは、読みやすさの指標としてフレッシュ・リーディング・イーズ・フォーミュラ (FRE)という値を使用します。0~100の数値で表され、数値が高ければ高いほど読みやすい文章と判定されます。

(出典:一般社団法人日本プレインランゲージ協会「読みやすさの指標」

リーダビリティ・テストには、一般社団法人日本プレインランゲージ協会が提供している日本語版と、WebFXという会社が提供している英語版がありますが、今回は英語版を利用しました。その理由は、日本語のサイトでは、読みやすさの指標であるFRE値の解釈が、若干誤解を招くような表記になる時があるからです。

では、早速検証結果を見ていきましょう!

Readability Testの結果は、FRE値が78.3で、「アメリカの11~12歳が理解できるレベル」でした。難しい単語やフレーズは、スピーチ全体の9.02%でした。

再選を狙うトランプ氏と政権を奪還したい共和党陣営は、少しでも多くの有権者にメッセージが届くよう、戦略的に英語レベルを決めたのではないかと思います。

実際に共和党全国大会を見てみると、小学生と思われる子どもを連れた参加者がちらほら見えました。小さな参加者たち(近い将来の有権者)にもわかりやすいよう、工夫したのかもしれませんね。

使われている語彙のレベル

上の検証で使ったリーダビリティ・テストでは、難しい単語やフレーズはスピーチ全体の9.02%という結果でしたが、実際にどれくらいのレベルの語彙が使われているのでしょうか?

語彙レベルを測るツール:Vocab Kitchen

測定に使ったVocab Kitchenは、CEFRという指標で語彙のレベルを判別してくれるツールです。上の画像は判定結果のスクショの一部です。

CEFR(共通ヨーロッパ言語参照枠)とは、言語能力を評価するための国際的な基準のことです。学習者のスキルは、A1~C2の6つのレベルに分けて評価されます。CEFRについてより詳しく知りたいかたは、こちらからどうぞ。

CEFRと言っても何となくピンとこないと思うので、CEFRと英検を比べた表をご紹介します。

(出典:英検CSEスコアとは )

さて、気になる語彙レベルの結果をご紹介します。(英検レベルはおおよその目安です。)

A1レベル(英検3級):73%

A2レベル(準2級):10%

B1レベル(2級):5%

B2レベル(準1級):4%

C1レベル(1級):1%

C2レベル(1級より高度):0%

この結果を見ると、英検3級を余裕で合格する英語力があれば、トランプ氏のスピーチの7割を理解できると言えるでしょう。

今回判定に使用したVocab Kitchenは、全ての英語学習者におすすめの無料ツールです。語彙レベルを判定するツールは他にもありますが、そのほとんどは字数制限があるため、長い文章には使えません。今回使用したスピーチは12,000文字以上の長文ですが、Vocab Kitchenでは字数制限を受けませんでした。良かったら英語学習のおともに使ってみてくださいね!(案件ではありません。)

ちなみに、トランプ氏のスピーチでよく使われる英単語をマスターしたいなら、The New General Service List (NGSL) 1.2がおすすめです。NGSL1.2の特徴や、それを使って効率的に語彙力を伸ばす方法ついて興味のある方は、以下の記事を読んでみてください。

文法のポイント

それでは早速、トランプ氏のスピーチでどのような文法が使われているのか詳しく見ていきましょう。各文法項目の説明で使っている例文は、実際にスピーチの中で使われているものです。

難易度が低めの文法

まず最初に、中学校で習う比較的難易度が低い文法から解説していきます。

1. 受動態

「The case was thrown out of court.(その訴訟は棄却された)」

受動態とは、何かが「される」ことを表現するときに使います。誰が何をしたかよりも、その結果に焦点を当てたいときに受動態を使います。

受動態を使うことで、訴訟が棄却されたという事実を強調しています。

2. 感嘆文

What a talent! What a beautiful, beautiful song.(すばらしい才能だ!本当に美しい歌だ!)」

感嘆文は、驚きや感動を表現する文です。 感嘆文は通常短い文ですが、とても強い感情を伝えることができるので、スピーチや日常会話で感動や驚きを表現するときに便利です。

3. 疑問文

Why is there so much blood?(なぜこんなに血が出ているの?)」

疑問文は、情報を求めるときや、相手に確認を求めるときに使います。情報を得るための基本的なツールとして覚えておきたい文法ですね。

4. 命令文

Look at that chart(あのグラフを見てください)」

命令文は、指示や要求を伝えるための文です。シンプルなので、相手に具体的なアクションを求めるときに非常に効果的です。プレゼンやスピーチの中でも、聴衆の注意を引きたいときに使えますね。

難易度が高い文法

トランプ氏のスピーチには、高度な文法も多く含まれています。ここでは、その中から3つピックアップして解説します。

1. 第三条件文 

If I had not moved my head, the bullet would have hit its mark.(もし私が頭を動かしていなかったら、その弾丸は的(私)に当たっていただろう)」

第三条件文は、「もしあの時こうしていたら、結果はどうなっていたか」という仮定の状況を伝えるときに使います。難しい構文とは言え日常会話ではよく使われるので、使えるようになると表現の幅が広がりますよ。

2. 前置詞句を使った強調表現

In the face of adversity, we remain united.(困難に直面しても、私たちは団結している)」

前置詞句は、場所や時間を示すだけでなく、文全体のニュアンスや特定の物事・状況を強調するために使われることがあります。

例文では、「In the face of adversity」という前置詞句を使うことで、団結しているという行動や状態が、困難な状況において行われていることが強調されます。つまり、困難な状況にもかかわらず、団結しているというメッセージがより強く伝わるわけです。

この前置詞句がなければ、「We remain united.(私たちは団結している)」というシンプルな文になり、メッセージの与える印象が薄くなります。

前置詞句は、前置詞とその後に続く名詞または代名詞の組み合わせからなる語句です。通常、場所や時間、方向、理由などの情報を提供します。例えば、「in the park」や「after the meeting」などです。

  • 前置詞: in, on, at, after, before, with など
  • 名詞: park, meeting, house, time など

前置詞句は文の中で形容詞や副詞の役割を果たし、名詞や動詞の意味を詳しく説明します。例文で見てみましょう。

  • 形容詞としての役割: "The book on the table is mine."
    → 「on the table」(テーブルの上に)は「the book」を詳しく説明しています。名詞を詳しく説明する(修飾する)形容詞として使われていいます。
  • 副詞としての役割: "She arrived before the meeting."
    → 「before the meeting」(会議の前に)は「arrived」を詳しく説明しています。ここでは動詞を詳しく説明する(修飾する)副詞として使われていいます。

3. 分詞構文

Raising my right arm, I looked at the thousands and thousands of people that were breathlessly waiting.(右腕を上げながら、息を呑んで待っている何千人もの人々を見た。)」

分詞構文は、2つの文を1つにまとめて簡潔にするために使われます。例文では「Raising my right arm」という分詞構文を使って、状況説明が簡潔に行われています。

分詞構文を使うことで、文がスッキリまとまります。分詞構文は英検2級レベルの文法ですが、使えるようになると表現の幅が広がりますよ。

分詞構文は、2つの文を1つにまとめて、よりスムーズに情報を伝えるために使われます。現在分詞(-ing)や過去分詞(-ed)を使います。例文で見てみましょう。

  • 文1: "She listened to music."(彼女は音楽を聞いていた。)
  • 文2: "She was relaxing on the couch."(彼女はソファでくつろいでいた。)

分詞構文でつなげると:

 "Relaxing on the couch, she listened to music."(ソファでくつろぎながら、彼女は音楽を聞いていた。)

4. 同格

My friend, the governor, will speak next.(私の友人である知事が次に話します)」

同格とは、名詞や代名詞の後にその内容を説明するフレーズを置くことで、情報を追加する文法です。

例文では、「the governor」が「My friend」の同格として使われています。「the governor」は「My friend」の職業や役割についての補足説明もしています。

同格を使うことで、特定の名詞や代名詞について、簡潔に補足説明することができるので、詳細な説明を自然な流れで文章に組み込むことができます。特に、登場人物や対象に関する重要な情報を伝えたいときに便利です。

英語ガチ勢におすすめ!リスニングとスピーキングの練習方法

ブログを読んで文法を理解した後は、リスニングとスピーキングの練習をしてみましょう。

【準備するもの】今回使用したスピーチを印刷したもの

      スピーチは下記リンクからコピーできます。できるだけ大きな文字で、行間を1.5~2ポイントで印刷すると、書きこみができるのでお勧めです。

      演説は1時間半以上あるので、原稿も相当な長さです。全文を印刷するととんでもない量になるので、自分が好きな部分だけを印刷してもいいです。

      原稿を印刷できたら、次は動画を準備しましょう。使う動画はこちら↓↓↓。

      次に、具体的な練習手順を説明します。

      【練習の手順】

      1. 上のリンクから、印刷したスピーチに該当する部分を再生し、原稿を見ないで聞く。
      2. 原稿を見ながら聞く。
      3. 原稿を声に出して読んでみる。読み方がわからない時は映像で確認したり、辞書で発音を調べたりすること。スラスラ読めるようになるまで練習する。
      4. 映像を再生し、原稿を見ながらトランプ氏の話すスピードで読む。スラスラできるようになるまで練習する。
      5. 原稿を見ないで、トランプ氏が話始めて1秒後にかぶせるように言う。

      トランプ氏の口調や身振り手振り、アイコンタクトの取り方を真似したりして、自分なりに楽しみながらやってみるのがポイントです。何度も練習していると、ふとした時に単語やフレーズがスッと出てきたりするので、ぜひそこを目指して頑張ってみてください!

      最後に

      いかがでしたでしょうか?

      ドナルド・トランプ氏のスピーチを通して、英文法や語彙を深く掘り下げることで、より実践的な英語力を身につけることができたのではないでしょうか。

      スピーチは生きた教材です。英語らしい表現方法やニュアンスに触れることができる恰好の教材なので、今回お伝えした練習内容を日々の英語学習に取り入れて、リスニングやスピーキングの練習に役立ててみてください。

      余力のある人は、ハリス副大統領のスピーチを使って学習してみると、トランプ氏のスピーチとの違いがわかって面白いですよ。

      英語力の向上には継続的な努力が不可欠です。少しずつでも着実に進めば、必ず成果が見えてくるので、あきらめずに続けてみましょう!

      Kyanbridge English では、今回のように生きた教材を使用して、受講者1人1人のためにカスタマイズしたレッスンを提供しています。

      ご興味のある方は、無料相談・体験レッスンにお申込みくださいね!

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      この記事を書いた人

      米国アイオワ大学で学士号と修士号を取得後、国連専門機関、大学、NPO、外資系企業など、英語が公用語の職場で20年以上の勤務経験あり。
      英語コミュニケーションの楽しさを伝えたくて、イギリスのケンブリッジ大学英語検定機構認定のCELTA(英語教授法資格)を取得し、Kyanbridge Englishを設立。

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