2024年は、アメリカ大統領選挙の年です。今回のブログでは、2024年8月に行われた民主党全国大会でのカマラ・ハリス副大統領(民主党大統領候補)の英語スピーチを題材に、その中で使われた語彙レベルと英文法を詳しく解説します。
ハリス大統領のスピーチは、旬の時事英語が満載!私たちがスピーチを行うときに使える高度なテクニックもふんだんに盛り込まれてこまれています。
英語スピーチが上手くなりたい人向けに、これらのテクニックもたっぷりご紹介していきますので、ぜひ最後までお読みください!
以下の記事では、2024年7月にドナルド・トランプ氏(共和党大統領候補)が共和党全国大会で行った指名受諾演説で使われている英単語の難易度や文法について、詳しく解説しています。今回の記事と比較しながら読むと、より英語力が向上するのでお勧めです。
今回使用するスピーチ原稿と動画について
今回教材として使用するハリス副大統領のスピーチ原稿と動画のリンクをご紹介します。
指名受諾演説の全文
このブログを執筆している時点(2024年9月上旬)では、ハリス副大統領のスピーチ原稿は会員登録しないと読めなかったり、要点だけをまとめたダイジェスト版が多いようです。
PDFを見つけたのでそちらのリンクを貼っておきます。こちらからどうぞ。
演説原稿全文(英語)と和訳を載せようと思ったのですが、著作権に抵触したら困るので、掲載することができません。原稿全文をコピペしてChatGPTなどの機械翻訳を試すか、以下のNHKサイトを読むと内容がわかりやすいと思います。
【英語のみ】指名受諾演説の動画
ご紹介する動画では、大会の熱気が伝わってきて、海外アーティストのコンサートのようです。カマラコールが鳴り響いて、副大統領がなかなかスピーチを始められなくて苦笑する場面もありました。日本の総裁選とは全然違う雰囲気ですね。
【同通あり】指名受諾演説の動画
TBSニュースが配信した同日訳付きの動画はこちら。
2024年民主党全国大会スピーチの英語レベル
文法と語彙の解説を始める前に、ハリス副大統領のスピーチの英語レベルについて解説します。レベルを測るツールは、トランプ氏のスピーチの英語レベルを測定するときに使用した、「リーダビリティ・テスト(Readability Test)」の英語版を使用します。
リーダビリティ・テストについては別の記事で触れています。こちらから別記事の該当部分に飛びますので、そこの項目を一通り読むとそのツールがどんなものなのかがわかります。興味のある方はどうぞ。
それでは、リーダビリティ・テストの結果を見てみましょう。
Readability Testの結果は、FRE値が70.6で、「アメリカの12~13歳が理解できるレベル」でした。難しい単語やフレーズは、スピーチ全体の12.77%でした。
それでは、ライバルのトランプ氏と比べえてみましょう。同氏が2024年7月に行った共和党全国大会でのスピーチの検証結果はFRE値が78.3で、「アメリカの11~12歳が理解できるレベル」、難しい単語やフレーズは、スピーチ全体の9.02%でした。
トランプ氏のスピーチと比べると、ハリス副大統領のスピーチは少々難易度が高いよう見えます。しかし、スピーチ動画を見ていると、難易度の違いはあまり感じませんでした。その理由をいくつか挙げてみます。
- 話すスピードが気持ちゆっくりめだから聞き取りやすい。
- イントネーションがはっきりしていて、メッセージがわかりやすい。
- 聞いている人が理解しやすいよう、適切な間をとっている
これら3つのポイントは、スピーチだけではなく日常会話でも使える方法です。詳しくは下記の記事で解説してありますので、興味のある方は読んでみてください。
使われている語彙のレベル
リーダビリティ・テストでは、難しい単語やフレーズはスピーチ全体の12.77%という結果でした。それでは実際にどれくらいのレベルの語彙が使われているのか、見ていきましょう。
語彙レベルの測定に使用したのは、トランプ氏のスピーチの語彙レベル測定で使用したVocab Kitchenです。
Vocab Kitchenについては、別の記事で触れています。こちらをクリックすると説明部分に飛びますので、そこの項目を一通り読むと、そのツールの特徴がわかります。興味のある方はどうぞ。
上の画像は測定結果のスクショですが、文字が小さくて見えづらいと思いますので、測定結果を抜粋して説明します。(英検レベルはおおよその目安です。)
A1レベル(英検3級):64%
A2レベル(準2級):10%
B1レベル(2級):9%
B2レベル(準1級):6%
C1レベル(1級):1%
C2レベル:(1級より高度)1%
スピーチで使用されている単語の6割強が英検3級レベルの単語ですね。
ちなみに、トランプ氏の検証結果は次の通り。
A1レベル(英検3級):73%
A2レベル(準2級):10%
B1レベル(2級):5%
B2レベル(準1級):4%
C1レベル(1級):1%
C2レベル(1級より高度):0%
ハリス副大統領のスピーチにはC2レベルの単語が1%(約30語)あり、その分A1レベルの単語が少なくなっています。そのため、トランプ氏のものよりやや難易度が高くなっていると言うことです。
ちなみに、ハリス副大統領のスピーチで使われている英単語をマスターしたいなら、The New General Service List (NGSL) 1.2がおすすめです。興味のある方は、以下の記事を読んでみてください。
文法のポイント
それでは早速、ハリス副大統領のスピーチで使われている文法について見ていきましょう。実際にスピーチで使われた文章を使って、5つの文法を説明していきます。
1. 現在形
現在形は、現在の状態について話すときだけではなく、一般的な事実や習慣的な行動について話すときにも使われます。
例文では、ハリス副大統領自身が「自分は愛国心にあふれている」という事実を述べるために現在形を使っています。
2. 過去形
過去形は、過去に完了した行動や状態について話すときに使います。どのくらい引っ越ししたのかちょっと気になります。
3. 現在進行形
現在進行形は、今まさに行われている行動や状態について話すときに使います。
この例文は、ガザ地区における紛争について述べたときに使われました。
「President Biden and I have been working around the clock.」(現在完了進行形 )
過去から続いている努力を強調します。
「President Biden and I are working around the clock.」(現在進行形)
大事な民主党全国大会でスピーチを行っているまさにこの瞬間にも、2人はガザ紛争について対応する準備ができている、という事実とコミットメントを強調しています。
こういう使い分けができると、英語上級者です。
4. 命令文
命令文は指示や要求を伝えるため文法ですが、相手に具体的なアクションを求めるときにも使います。
文中の「it」は、ハリス副大統領がスピーチ全体を通じて述べた価値観、理想、アメリカという国とその民主主義を守り、次世代に受け継ぐための戦いを指しています。
力強く聴衆を鼓舞するこのフレーズをスピーチの締めくくりとして使うのは、さすがです。
5. 現在の強い意志を表すwill
「will」は、未来の出来事や状態について話す時に使いますが、意思や決意を表明する場合にも使います。
この例文からは、ハリス副大統領が現在の時点で、「絶対に大統領になるという強い決意がある」ことが伝わってきますね。
「highest aspirations」というフレーズは、「最高の理想」や「最も高い志」を意味します。ハリス副大統領はこの表現を使うことで、自分が目指しているものが単なる目標ではなく、国全体が共有すべき崇高な理想であることを強調しています。
そして実際、聴衆が「自分たちもその夢を共有しているんだ」と感じ、一体感が生まれていました。こうした言葉の選び方は、スピーチを聴く人の心に響く大切なポイントですね。
スピーチで使える高度なテクニック
ここからは、ハリス副大統領のスピーチから抜粋した文章を使って、私たちがスピーチで使える高度な表現方法をご紹介します。
ここで使う文章はこちら。↓↓
It is now our turn to do what generations before us have done.
Guided by optimism and faith,to fight for this country we love.
To fight for the ideals we cherish.
And to uphold the awesome responsibility that comes with the greatest privilege on Earth.
今こそ、私たちが過去の世代が果たしてきた役割を引き継ぐ時です。
希望と信念に支えられながら、この愛する国のために戦うのです。
大切にしている理想のために戦うのです。
この世で最大の特権に伴う重大な責任を果たす時が来たのです。
1. フレーズを反復する
例文では、不定詞(to+動詞)を使った文が反復されています。こうすることでメッセージが強調されるので、聞いている人に重要なメッセージを記憶してもらいやすくなります。
このような方法はスピーチのクライマックスや最後によく使われ、聞いている人の心にメッセージを焼きつけます。実際、ここでご紹介している文章は、ハリス副大統領のスピーチの締めくくりとして使われています。
2. 力強い言葉を使う
パブリックスピーチでは、言葉や表現を工夫して、伝えたいメッセージをより強く印象づける必要があります。ハリス副大統領は、力強い言葉を巧みに使うことで、聴衆に対して特定のメッセージや感情を強く伝えています。
具体的には、「fight(戦う)」「uphold(支える)」という動詞を、「awsome responsibility(重大な責任)」「the greatest privilege(最大の特権)」という感情的な強さを持つ言葉と組み合わせて使うことで、聞いている人を高揚させています。
また、「It is now our turn(今度は私たちの番です。)」という表現を使って、過去の世代が果たしてきた役割を引き継ぐ責任が自分たちにあることを強調し、今こそ行動を起こす時であるというメッセージを伝えています。
3. ポジティブな感情に訴える
スピーチでは、「optimisum(楽観主義、希望)」や「faith(信念)」といったポジティブな感情に訴える言葉が伝われていrます。
こうすることで、スピーチ全体が前向きなトーンになり、聴衆はより共感しやすくなります。
最後に
いかがでしたでしょうか?
今回ご紹介したハリス副大統領のスピーチには、私たちが日常的に使える表現がたくさん含まれていました。
それだけではなく、スピーチで使えるテクニックも盛りだくさんです。
人を説得し、鼓舞するスピーチをする時は、今回ご紹介したハリス副大統領のスピーチ動画を繰り返し見て、イントネーションや間の取り方を練習してみてください。同じように話すことができたら、聞いている人は感動のあまり鳥肌が立つだろうと思います。(話の内容にもよりますが。)
スピーチは生きた教材です。スピーチ教材としてはTED Talksがとても有名ですが、大統領や大統領候補のスピーチも非常におすすめです。オバマ大統領のスピーチは人気があるので、スピーチ原稿や動画はたくさん見つかると思います。
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