今回のブログでは、ニュース英語(時事英語)から英語表現を学びたい学習者向けに、トランプ大統領のイラン核濃縮施設攻撃に関するスピーチの語彙レベルと文法を詳しく分析していきます。
スピーチを教材に使ってスピーキングやリスニングを練習する方法もご紹介していますので、英会話の練習のお役に立てば嬉しいです。
ちなみに、私は政治的に中立です。
【教材】演説の原稿と動画について
まず最初に、今回使用する演説の原稿と動画のリンクをご紹介します。
英語スピーチ全文と動画は、以下のリンクからアクセスできます。
abcニュースを選んだ理由は、単純に原稿と動画が同時に確認できるからです。

本ブログ内で使われている演説の翻訳は、以下の「時事ドットコム」のサイトから引用しました。
英語演説の難易度検証
私のブログでは、過去に何度かトランプ大統領の演説を取り上げ、その英語レベルについて解説してきました。
検証では、CEFR A1~A2レベル(英検3級~準2級)の単語が多く使われていた上に、文法もかなりシンプルだったので、英語学習者にとってわかりやすいという結果でした。
さて、今回はどうでしょうか?
英語の難易度検証には、可読性診断ツール「リーダビリティ・テスト(Readability Test)」という文章の読みやすさと理解しやすさをチェックするツールを使用して、スピーチ文の読みやすさを診断しました。
「リーダビリティ・テスト」について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

過去に検証したトランプ大統領の演説の英語レベルについて興味のある方は、以下のブログを読んでみてくださいね。(なんか画像が全部似たようなもの・・・手抜きじゃないですよ!)



可読性(リーダビリティ)検証
それでは、リーダビリティ・テストの検証結果を見ていきましょう。
結果は「アメリカの13~14歳が理解できるレベル」。
大まかに言ってCEFRではB1、英検では準2級程度です。
2025年4月の相互関税(reciprocal tariffs)導入を発表したときの演説と比べると、英語の難易度は少し高くなっています。

語彙の難易度検証(CEFR/英検レベル)
次に演説で使われている語彙のレベルを見ていきましょう。
測定には、CEFRという指標で語彙のレベルを判別してくれるVocab Kitchenを使いました。上の画像は判定結果のスクショです。
CEFRに慣れていない人のために、英検レベルと照らしあわせて分析してみました。(英検レベルはおおよその目安です。)
A1レベル(英検3級):63%
A2レベル(準2級):12%
B1レベル(2級):7%
B2レベル(準1級):8%
C1レベル(1級):1%
C2レベル(1級より高度):0%
英検3級レベルの語彙が6割以上も使われている、ということがこの分析でわかります。
過去の主要演説との比較
今回の演説を、トランプ大統領の過去の主要演説と比べてみました。
リーダビリティ | 難しい語彙やフレーズ | 英検3級レベルの語彙 | |
イラン核施設攻撃演説 | アメリカの13~14歳が理解できるレベル | 13% | 63% |
トランプ関税演説 | アメリカの11~12歳が理解できるレベル | 1% | 72% |
トランプ大統領就任演説 | アメリカの15~16歳が理解できるレベル | 15% | 63% |
大統領候補者討論会 | アメリカの10~11歳が理解できるレベル | 12% | 65% |
トランプ指名受諾演説 | アメリカの11~12歳が理解できるレベル | 9% | 73% |
就任演説を除く過去のスピーチの中では、難易度がやや高い結果が出ました。
使われている語彙の6割以上は、英検3級レベルなのですが、演説のところどころで複雑な文法が使われているので、英検3級レベルでも理解が難しい文はいくつかあります。
私の勝手な解釈ですが、いつもの英語よりちょっと難易度の高い英語を使うことで、改めてアメリカ大統領としての威厳を世界に見せつける意図があったのかもしれませんね。
難しいフレーズの解説:the likes of which
ここからは、演説で使われた「the likes of which」という表現意味やニュアンス、文法を詳しく解説していきます。
これはニュースやスピーチ、文書などフォーマルなシーンで多く使われる表現で、トランプ大統領の演説の中では、次のように使われていました。
And most importantly, I want to congratulate the great American patriots who flew those magnificent machines tonight and all of the United States military on an operation the likes of which the world has not seen in many, many decades.
そして最も重要なことだが、見事な軍用機を操縦した偉大な米国の愛国者、世界が何十年も見たことがない作戦に従事した米軍全員を祝福したい。
この部分のスピーチは、abcニュースのYouTube動画の1分51秒から聞けます。
文法の説明
「the likes of which」は通常、以下のような形で使われます。
[先行詞] + the likes of which + [主語+動詞]
演説の文では、[先行詞]と[主語+動詞]は以下のようになります。
[先行詞]」:an operation
[主語+動詞]:the world has not seen
「the likes of which」は、「そのような種類のもの(人・出来事)」という意味で、文全体としては「[先行詞]のようなものを[主語]は〜したことがない」という意味になります。
先行詞が単数なのに、なぜ「the likes of which」と複数形にするの?
ここで、「先行詞 an operationは単数形なのに、なぜlikeではなくlikesと複数形になっているの???」と疑問に思う文法大好きさんがいるかもしれませんね。
実は口語表現では、「the likes of which」は先行詞が単数か複数かは関係なく使われているんです。
厳密に言えば先行詞が単数であれば「like」にするのが文法的に正しいので、フォーマルな文章ではそのようにしますが、口語では一般的に複数形の「the likes of which」がi使われているんですよ。
フレーズのニュアンス
実は「the likes of which」には次のようなニュアンスがあるんです。
「the likes of which」
- 称賛する場合にも使われますが、やや感情的でネガティブまたは軽蔑的なニュアンスを伝えたい場合に使われることが多い。
実際に英字新聞や記事で使われている例文を見てみましょう。
- The world faces a global pandemic the likes of which has not been seen for a century.
(世界は今、この100年間で見たことのない世界規模のパンデミックに直面している。)
ナチュラルスピード:
ゆっくり:
"Part of what makes it so challenging is all of those tools deployed in tandem, at a scale the likes of which we've never seen," Wray said.
「これがこれほど困難になっている理由の一つは、これら全てのツールが私たちがこれまで見たことのない規模で同時に行われているからです。」とレイ氏は述べました。
ナチュラルスピード:
ゆっくり:
他にもインターネットで検索してみましたが、やはりネガティブな意味合いで使われる方が多いように思います。
シーン別フレーズ
「the likes of which」が持つニュアンスとフォーマルさを理解したうえで、ビジネスシーンと医療現場で使える例文をご紹介します。
医療カンファレンスで:
We’re dealing with a complication the likes of which we haven’t encountered before in this hospital.
我々は、当院でこれまでに遭遇したことのないような合併症に直面しています。
ナチュラルスピード:
ゆっくり:
報告会で:
The client sent a complaint the likes of which we hope never to receive again.
あのようなクレームは、二度と受け取りたくないと思うほどの内容でした。
ナチュラルスピード:
ゆっくり:
効果的なリピーティングとシャドーイング方法
今回の演説を使って、スピーキングとリスニングを同時に鍛えたいなら、リピーティング&シャドーイング」がおすすめです。
とてもポピュラーですが、ほとんどの人はあまり効果的ではない方法で行っています。
「リピーティングもシャドーイングもやっているけれど、効果が実感できない」という方は、以下の記事でご紹介しているトレーニング方法を試してみてくださいね!

高頻度英単語リスト|The New General Service List(NGSL)
とにかく英語学習を効率化したい人には、圧倒的に使用頻度の高い2809語が収録されているNGSL単語集をおすすめします!
私が作ったのではないのですが、忙しい人にはとてもお勧めです。
詳細は以下の記事に書いてあるので、興味のある方は読んでみてくださいね。

最後に
いかがでしたでしょうか?
トランプ大統領の英語は、一つ一つの文が短く、英検3級レベルの単語を使っていることがとても多いので、歴代大統領の演説と比べても、わかりやすいのではないかと思います。
今回ご紹介した「リピーティング&シャドーイング」のトレーニング方法を使えば、効率的に英語スピーキング力とリスニング力を鍛えることができるので、ぜひ試してみてくださいね。
Kyanbridge Englishでは、時事問題も含め、一人ひとりのニーズに合わせてカスタマイズしたレッスンをご提供しています。
ぜひお気軽にお問い合わせください!
